|
|||||||||||||||||||||||
|
ワ イン物語 | ボージョレ |
今週取り上げるのは「ボージョレ」。 「ボージョレ」と言えば、「ヌーボー」ですが、 「ヌーボー」以外の「ボージョレ」はあまり知られていません。 しっかりした味わいのすばらしい「ボージョレ」の選び方をお伝えします。 |
「ボー
ジョレ」は地方の名前。「ヌーボー」だけじゃない |
|||
「ボージョレ・ヌーボー」という言葉があまりに一般的になりすぎて、「ボー
ジョレ」がフランスの地方の名前であることを知らない人も少なくないでしょう。また、「ボージョレ」と言えば「新酒」と結び付けてしまう人もいるはずで
す。 確かに、毎年11月の第3木曜日、ボージョレ・ヌーボーの解禁日はちょっとしたお祭り騒ぎですから、ワイン愛好家でなくてもこの名前が耳に付きますよね。 そもそもボージョレ・ヌーボーはこの土地で作られる新酒のことで、解禁日となる11月第3週の木曜日はその年のワインの出来、不出来を占う年に1度のお祭 りです。この新酒は収穫からなんと6週間ほどで出荷されます。通常のワインは、出荷まで短くても1年程度かかりますから、驚異的なスピード。マセラシオ ン・カルボニックという特別な醸造法で、ブドウを炭酸ガスの中で発酵させ、短期間に色素を抽出し、タンニン分(渋みの成分)が少ないフレッシュなワインを つくることができます。 また、他のワイン生産地区でもこの新酒は作られており、プリムールとも呼ばれています。ボージョレを含むこうしたワインは鮮度が命。作られてから1年以内 に飲むべきワインです。 皆さんがボージョレ・ヌーボーを飲んだ印象はいかがでしたか? 確かに果実の味がふんだんにしますが、ときに「ブドウジュース」と表現されることもあるく らいですから、軽く、味わいが薄すぎると感じた人もいるはずです。 もちろんボージョレ・ヌーボーが好きならそれはそれでいいのですが、ボージョレでは「ヌーボー」だけではなく、すばらしくおいしいワインがたくさんあるこ とは、意外と知られていません。ボージョレをヌーボーだけしか知らないとしたら、それはとてももったいないことです。今回は、ヌーボー以外のボージョレに ついて、お話したいと思います。 |
|
||
ガメイ種から作られるフルーティな赤ワイン |
|||
ボージョレがワインの産地名であることは既にお話しましたが、どんな場所に
あるのでしょうか。 ボージョレは大きく分類すると、ブルゴーニュ地方の一角に数えられます。しかし、いわゆるブルゴーニュ地方のワインと味わいは大きく異なります。その理由 の一つは、栽培されているブドウの品種。ブルゴーニュ地方のほとんどの地区で赤ワインはピノ・ノワール種から作られていますが、ここボージョレ地区ではガ メイ種というブドウ品種からワインが作られます。 ガメイ種は、栽培がしやすく収穫量が多いために14世紀ぐらいまでブルゴーニュのコートドール一帯で栽培されていました。コートドールは、現在ではピノ・ ノワール種からすばらしいワインが作られている地区です。しかし当時、この地方の土壌の特徴である石灰質の土壌で栽培されたガメイ種からは、酸味の強い、 薄いワインしかできなかったのです。 その頃ブルゴーニュ公国を統治していたフィリップ公はこの凡庸なワインを嫌い、コートドールの畑でガメイ種を栽培することを禁止しました。そこで引き抜か れたガメイ種は南のボージョレ地区に移植されることになり、現在のボージョレ・ワインの礎となったのです。 ボージョレ地区はブルゴーニュ地方で最も南に位置しているため、気候が温暖。さらに地質は花崗岩が主体であり、ガメイ種とは非常に相性がよく、糖分が豊富 で酸味も生きたブドウが実るのです。 |
|
||
ブルゴーニュの半分を占める広い栽培面積 |
|||
私がボージョレ地区を訪れたのは、7月も終わり。北のパリでは夏でも薄手の
コートが必要なくらい、肌寒い日がありますが、パリより数百キロ南に位置するボージョレは猛暑でした。フランス第3の都市、リヨンに投宿していた私は、ど
うしてもボージョレの畑が見たくなり、電車に乗って北に向かったのです。 ブルゴーニュのコートドール地区であれば、一つの町からちょっと歩けば、質の高いワインを生み出す特級畑にたどりつくことができます。それと同じような気 持ちで、ベルヴィルという駅を降りたのですが、勝手が違いました。確かに一面のブドウ畑には変わりないのですが、平らな土地にどこまでもブドウ畑が広が り、とうてい私の目指す有名なブドウ畑に到達するのは無理そうでした。ボージョレは、ブルゴーニュ地方の半分を占めるといわれるほど、栽培面積が広いので す。 |
|
||
しっかりとしたワインを生む「クリュ・ボージョレ」 |
|||
私がこのとき目指した「有名な畑」とは、ボージョレの中でも「モルゴン」
「ムーラン・ア・ヴァン」というワインを産出する畑です。これらのワインは、ヌーボーのように口当たりが軽いワインではなく、しっかりとした長期熟成に耐
える「強い」ワインであり、ボージョレ・ワインの中でも「クリュ・ボージョレ」という高い格付けがされたワインなのです。 クリュ・ボージョレは作ることが認められた10の村で作られ、出来上がったワインのラベルにも村の名前を表記することが許されています。 さて、ここでボージョレ地方の格付けの方法を見てみましょう。ブルゴーニュ地区と言われながら、他のブルゴーニュ地方の格付けとは少し異なります。上位か らクリュ・ボージョレ、ボージョレ・ヴィラージュ、ボージョレ・シュペリュール、ボージョレに格付けされます。 クリュ・ボージョレは以下の通り。村名を名乗ったこれらのワインはいずれもしっかりとしてこくのある、コートドールのワインに引けを取らないすばらしい赤 ワインとなっています。 Brouilly ブルイィ Chenas シエナス Chiroubles シルーブル Cote de Brouily コート ド ブルイィ Fleurie フルーリー Julienas ジュリエナス Morgon モルゴン Moulin-a-Vent ムーラン−ア−ヴァン Regnie レニエ Saint-Amour サン−タムール |
|
||
肉も、魚介も和食も…選択肢が広いワイン |
|||
もともと、ガメイ種を原料としたワインはフレッシュな果実味をもち、時にはイチゴジャムのような凝縮した香りを感じるこ
とができます。また、「甘草」のような独特の香りもあるといわれています。また、クリュ・ボージョレのワインなどは、八角、丁子のようなスパイスの複雑な
香りがあります。 このようにフルーツやスパイスの香りなど、さまざまな側面を持つワインですから、料理との合わせ方も選択肢が多くあります。 リヨンで訪れたミシュラン2つ星の「レオン・ド・リヨン」というレストランで、コース料理をオーダーしたとき、その中身はオマール海老やヒツジの肉など、 ワインとの合わせ方がとても難しいものでした。しかし、リヨンといえばやはりボージョレが近い。迷わず選んだのが、クリュ・ボージョレの一つ、「モルゴ ン」です。 「モルゴン」はクリュ・ボージョレの中でもしっかりしたワインといわれ、強さの中にも繊細さがあり、オマールと合わせても料理を殺さず、ヒツジ肉と合わせ ても負けません。ワインを選んだとき、給仕にも「いい選択ですね」と言われたくらいでした。 また、今でも人をお招きし、一見ワインとの相性が難しそうな中華や和食のテイストを取り入れた食卓を演出する場合には、ワインのラインナップに必ずボー ジョレの「モルゴン」や「ムーラン・ア・ヴァン」を入れるほどです。スパイス香やフルーツ香など中華や和食にある風味が、ボージョレの中にも内在するから です。 ヌーボーの時期だけでなく、ボージョレ・ワインを試してみてほしいと思います。 |
|
||
ボージョレと相性のいい料理と適温 柔らかなタンニンとフレッシュな果実味が楽しめるボージョレやボージョレ・シュペリュールクラスのものは軽めの赤ワインなので、魚料理や比較的あっさりと した味付けに仕上げたペッパーステーキなどの肉料理とも相性がいいです。温度は10度から12度ぐらいの比較的低めの温度帯で飲むときりっと引き締まった 味わいを楽しむことが出来ます。 ボージョレ・ヴィラージュやクリュ・ボージョレクラスのワインはしっかりと重いつくりになっているので、料理とのバランスから見ても肉料理との相性は抜群 です。すばらしいつくりのボジョレには、ときには漢方薬に使われる甘草の香りや八角などのスパイスを感じることがあるので、中華料理とも相性がよく、八角 で香り付けした豚の角煮などともよくあいます。 温度は12度から15度ぐらいが目安です。 お勧めのドメーヌ、ネゴシアン ボージョレを飲んで、おいしいと思った経験のある作り手、畑を挙げましたので、参考にしてください。 Domaine Leroy Beaujolais Village ドメーヌ・ルロワ ボージョレー・ヴィラージュ Maison Louis Jadot Chateau des Jacques Moulin-a-Vent メゾン・ルイ・ジャド シャトー・デ・ジャック ムーラン・ア・ヴァン Potel Aviron Morgon Cote du Py Vieilles Vignes ポテル・アヴィロン モルゴン・コート・デュ・ピィ・ヴィエイユ・ヴィーニュ Georges Duboeuf Fleurie ジョルジュ・デュブッフ フルーリー Domaine Michel Chignard Fleurie Les Moriers ドメーヌ・ミシェル・シニャール フルーリー・レ・モリエール |
|
||