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ワ イン物語 | ジュヴレ・シャンベルタンその2 |
先週、ブルゴーニュの格付けについて詳
しく学びましたが、 今週はいよいよ本題、 「ジュヴレ・シャンベルタン」についてお話しします。 複雑な格付け、畑の名前などを整理し、 すばらしいシャンベルタンとの出会いを楽しんでほしいと思います。 |
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「ジュヴ
レ・シャンベルタン」は当たりハズレが多い? |
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ジュヴレ・シャンベルタン村はブルゴーニュ地方で最も有名なワインを産出す
る村の一つで、ジュヴレ・シャンベルタンその1 で学んだ「地区名」では、「コート・ド・ニュイ」に属します。 他の多くのブルゴーニュの村々と同様、ピノ・ノワールというワイン品種から赤ワインが造られます。極めて色の濃い、凝縮したブドウの風味を持ち合わせてお り、すばらしいものではきのこやチーズなどの複雑な味わいや優雅さを兼ね備えた、偉大なワインとなるのです。 しかし、そのようなすばらしいワインを産出する名声とともに、ジュヴレ・シャンベルタン村のワインには当たりハズレが多いといった言葉をよく耳にします。 こういわれるのにはいくつかの理由があると思いますが、一つには名前のややこしさを挙げることができると思います。 |
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同じシャンベルタンでも違うワイン? |
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もともとジュヴレ・シャンベルタン村はジュヴレ村といいました。 13世紀、ジュヴレ村のベース修道院が管理していた「クロ・ド・ベーズ」という畑から造られるワインは、比類なきワインとして有名で、この名声を聞きつけ てやってきた農夫のベルタンは、そのすぐ隣の畑を買い取り、そこから同様のすばらしいワインを造ることに成功しました。それをうらやんだ村人たちはその畑 を「ベルタンの畑」という意味の「シャン・ド・ベルタン」と呼ぶようになりました。それが、「シャンベルタン」という名前の始まりです。 近世に入ってからもここで造られるワインのすばらしさは広く知れ渡り、その名声はさらに、ナポレオンによって不動のものとなりました。ナポレオンはシャン ベルタンをこよなく愛し、シャンベルタン以外のワインは口にしなかったといわれています。ロシア遠征のときにもわざわざワインを運ばせたという逸話も残っ ているほどです。 そんなシャンベルタンの名にあやかって、1848年、ジュヴレ村の村長は、村名ワインの評判を高めるために、村名にシャンベルタンの名をつけ加え、「ジュ ヴレ・シャンベルタン村」という現在の名称が誕生したのです。このとき、同様に、9つあるシャンベルタンのグラン・クリュの畑にも「シャルム・シャンベル タン」などのように、「シャンベルタン」の名を付け加えました。 こうして、最初は一人の農夫が開拓した一つの畑の名称に過ぎなかった「シャンベルタン」という名称が、どんどん広がっていきました。 結果的に「シャンベルタン」という名前は、村名ワイン、プルミエ・クリュのワイン、そしてグラン・クリュの全ての畑から産出されるワインに見られるように なったのです。 消費者にとっては、「シャンベルタン」という名前がついていても、それがどんな格付けのワインなのかがまぎらわしいのが現状です。どこかで「シャンベルタ ンというワインはスゴイ」と聞いて、シャンベルタンと名の付くワインならどれでもいいと思って購入してしまう場合もあるようです。 さらに、市場自体がシャンベルタンとさえ名の付いているワインであれば高値で取引されるようになり、質の割には値段の高いワインがあります。たとえば、ブ ルゴーニュの村名ワインは一般的に、3000円ぐらい出せば多くの銘柄から選ぶことが出来ますが、ジュヴレ・シャンベルタン村の村名ワインは3000円以 下で見つけることはかなり難しいです。 それでもおいしければ問題ないのですが、残念ながら期待はずれという場合も多く、シャンベルタンの本質的な特徴を見出せないワインも多く見られます。 |
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ジュヴレ・シャンベルタンのワインの格付けとは? |
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そこで、まずはシャンベルタンの名のつくワインが見分けられるように、ジュ
ヴレ・シャンベルタン村のワインの格付けを整理してみます。 格付けに「シャンベルタン」と名の付くワインが登場するのは、村名ワイン「ジュヴレ・シャンベルタン」が最初です。その上に、26のプルミエ・クリュの 畑、9つのグラン・クリュの畑が格付けされています。 ちなみに、グラン・クリュに「シャンベルタン」という畑名がありますが、これこそ先の逸話に登場した農夫が開拓した畑であり、ナポレオンが愛した「シャン ベルタン」は、この「シャンベルタン」だと言われています。 ラベルの読み方は図の通りですが、ラベルにどんな名前が入っているのか、それが格付けを知るポイントになります。 とはいえ、これを全部覚えるのは容易なことではありません。しかし、グラン・クリュやプルミエ・クリュのワインでも中には畑の名前しか入っていないものも ありますが、多くはグラン・クリュ、プルミエ・クリュという表記がされている場合が多いので、それを手がかりにするのが手っ取り早いでしょう。 |
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ときとして質を下げる平坦な土地の「村名ワイン」 |
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さて、ジュヴレ・シャンベルタンのワインが
当たりハズレが多いと言われる2つめの要因として、村名ワインとして認められ
る地域が広すぎることがあげられます。 ジュヴレ・シャンベルタン村のある「コート・ド・ニュイ」地区は、ブルゴーニュ地方の中でも傑出したワインが生産される地区として、世界でもその名を知ら れています。 このコート・ド・ニュイ地区を貫くのが、国道74号。この国道74号を、北から南に進路を取ると西側には丘の斜面が、東側には平坦な土地が広がるのが分か ります。 コート・ド・ニュイの村々は国道74号線によって串刺しにされたような格好になっており、つまり、多くのコート・ド・ニュイの村々は、それぞれ西の斜面と 東の平坦な土地の両方にブドウ畑を持っているということになります。すばらしいワインは完熟したブドウから生まれるので、同じ村の中でも太陽の光を存分に 浴びる西側の斜面に、格付けが高い畑が位置しています。 このコートドール地区の中でも、ジュヴレ・シャンベルタン村は突出した栽培面積で知られています。それ自体には問題はないのですが、コート・ド・ニュイ地 区の中で唯一、この村だけが、国道74号またいだ平坦な土地から収穫されたブドウを使っても、村名ワイン、つまり「ジュヴレ・シャンベルタン」のAOCが 名乗れるのです。 他の村では、この国道の東側のブドウでは「村名ワイン」を作ることを認められておらず、格下の「地方名ワイン(ブルゴーニュ)」や「地区名ワイン(コー ト・ド・ニュイ)」のワインとなります。 もちろん他の村と比較して、ジュヴレ・シャンベルタン村の土壌や風土が持つすばらしい立地が評価された結果ではありますが、隣接する村との条件と比較する と、やはり過大評価をされているように思われます。 結果として、「値段の割にはおいしくない」と感じる確率が高くなってしまうというわけです。 |
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作り手によってはすばらしい村名ワインも | ||||
しかし、全ての村名ワインが飲むに値しない
というわけではなく、すばらしいジュヴレ・シャンベルタンを生産している作り手も多く存在します。 「シャブリ」のコラムでも述べましたが、ブルゴーニュでは1つの畑を多くの人が所有しており、たとえば同じグラン・クリュの「マジ・シャンベルタン」とい うワインでも、「○○さんが作ったマジ・シャンベルタン」もあれば、「××さんが作ったマジ・シャンベルタン」 と、違うラベルの 「マジ・シャンベルタン」が存在するわけです。 こうした作り手は「ドメーヌ(自社畑のワインを醸造まで一手に行う生産者)」や「ネゴシアン(いろいろな生産者のブドウを買い付けて醸造を行ったりするワ イン商)と呼ばれており、同じ畑のワインでも、作り手によって味わいは大きく変わります。 極端な例ですが、一生懸命手塩にかけてブドウを育て、醸造の研究や設備投資に熱心な作り手と、そうでない作り手では、味わいに差が出てくるのは当然のこと です。 すばらしい作り手の手にかかれば村名ワインでも、色が深く、ブドウの凝縮感と土やチーズ、きのこなど、この村のワインの特徴とされる複雑な風味を持ったワ インとなります。 そしてその作り手が作るプルミエ・クリュ、グラン・クリュのワインとなればそれらの特徴はより強く感じられるようになります。 逆に、たとえグラン・クリュのワインでも、残念ながらジュヴレ・シャンベルタンらしさを感じることができず、がっかりしてしまうようなこともあるのです。 このようにこれはブルゴーニュワイン全体にもいえることですが、いいワイン、おいしいワインというものは、格付けに比例するものではなく、ドメーヌやネゴ シアンと呼ばれる作り手を意識して選ぶことがポイントなのです。 |
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グラン・クリュでもお勧めできない作り手もいる | ||||
ジュヴレ・シャンベルタン村を旅したときに
宿泊した「TERROIRE
(テロワール)」という名のホテルは、部屋の名前がすべてジュヴレ・シャンベルタンのグラン・クリュの畑の名前でした。私が宿泊した部屋は、「マジ・シャ
ンベルタン」。せっかくだから記念に、「マジ・シャンベルタン」を買って行こうと、ニュイ・サン・ジョルジュ村というコート・ド・ニュイの中ではもっとも
大きな村に出かけました。 ニュイ・サン・ジョルジュには、試飲のできるワインショップが数多く並びます。「Degustation(デギュスタシオン)」という看板が、その目印で す。 何軒か回った中で、もっとも親切だったのが国道74号線沿いにある「カーブ・ジャック・フランソワ(Cave Jaque Francois)」。その店主は、10本近くも試飲をさせてくれたほか、味わいや飲み頃など、丁寧に教えてくれました。 私が「マジ・シャンベルタン」がほしいというと、「残念ながら、今、うちにはおすすめできるような作り手のマジ・シャンベルタンがない」と言います。 そして、私の好みを聞きながら、彼が薦めてくれたのは、そこにあった「マジ・シャンベルタン」より値段が安い、プルミエ・クリュのシャンベルタン。「ワイ ンは作り手が大事だ」と繰り返し私に言って聞かせました。 下に、ジュヴレ・シャンベルタンのすばらしい作り手といわれるドメーヌ、ネゴシアンを挙げましたが、他にもたくさんあるはずです。これは、ワインショップ で、「おいしいジュヴレ・シャンベルタンが飲みたいのですが、この作り手はいかがですか?」などと聞けば、(しっかりしたワインショップであれば)説明し てくれるはずです。 |
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「旅」をさせたら少なくとも2週間は休ませる | ||||
そして、帰り際、「パリに帰ってから飲むの
か?」と聞かれ、私は「明日、パリに帰ったらすぐ飲みたい」と答えたのです。すると、「ノンノン」と首を振ります。「ワインは旅をしたら少なくとも2週
間、できれば3カ月は寝かしてから飲んだほうがいい」と言うのです。 特に古いワインは、滓というカスのようなものが出てきます。品質そのものに影響はありませんが、それが混じっていると、どうしても味がにごってしまうので す。彼が言ったのは、動かすと沈んでいた滓がワイン全体に混じってしまうので、休ませて再び沈めてから飲むことが大事、ということなのです。 さらに、「あんまり冷やし過ぎないようにね」と笑った顔が、今でも忘れられません。産出する畑、作り手はもちろん大事ですが、飲み手の気遣いも大切だと、 このとき教えられました。 パリに帰って数週間、ツバを飲み込みながら、ワインの滓が沈むのを今か今かと待ち、飲んだときのおいしさはひとしおでした。 |
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ジュヴレ・シャンベルタンと相性のいい料理と適温 しっかりとしたタンニンと果実の凝縮感を感じるジュヴレ・シャンベルタンのワインは重めの赤ワインなので、肉料理との相性は抜群です。時には土やきのこな どの複雑なニュアンスも感じることができ、きのこ類とも相性がいいです。 プルミエ・クリュやグラン・クリュのクラスのものは、よりしっかりと重いつくりになっており、複雑なスパイス香も感じることができますので、ややくせのあ る鴨や羊肉とも相性がよいです。 また、ブルゴーニュ地方ではシャンベルタンのワインで洗って熟成させたウォッシュタイプのチーズ(写真は「L’Ami du Chambertin(ラ ミ・デュ・シャンベルタン)」があり、このチーズとの相性はお互いの風味が相乗効果を増し、すばらしいものがあります。 飲む温度は、18度が目安です。今の季節(4月)であれば、室温で飲むのをお勧めします。 お勧めのドメーヌ、ネゴシアン ジュヴレ・シャンベルタンを飲んで、おいしいと思った経験のある作り手を挙げましたので、参考にしてください。 ■Domaine Alain Burguet ドメーヌ・アラン・ビュルゲ ■Domaine Armand Rousseau Pere et Fils ドメーヌ・アルマン・ルソー・ペール・エ・フィス ■Domaine Denis Mortet ドメーヌ・ドニ・モルテ ■Domaine des Varoilles ドメーヌ・デ・ヴァロワーユ ■Philippe Naddef フィリップ・ナデフ |
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