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ワ イン物語 ジュヴレ・シャンベルタンその1
今週は、ブルゴーニュの代表的な赤ワイ ンの一つ、
「ジュヴレ・シャンベルタン」を取り上げます。
このワインを知るに欠かせないのが、
フランスとブルゴーニュワインの格付けの仕組み。
ちょっと複雑ですが、一度覚えてしまえば、ワインの楽しみがより広がります。
ブルゴー ニュワインを理解するために、
一度は通るべき道……

ブルゴーニュ地方の中でも、比較的北側に位置する「ジュブレ・シャンベルタ ン村」。ここのワインは、ナポレオンに愛されたという逸話が残っているほど、名の知れたワインの一つです。
また、この村の名前が付くワインは比較的高値で販売されています。村を歩いたとき、たった数日の滞在中、2台のランボルギーニ・カウンタックを見かけ、と ても驚いたものです。高名なワインの恩恵を受け、豊かな人も多いのでしょう。
確かに私自身、このワインによって素晴らしい体験をしており、ぜひこのコラムで取り上げたいと思ったものの、そこには壁がありました。それは、どの地方よ りも複雑なブルゴーニュワインの「格付け」です。ワインをちょっと勉強した人にとっては、ブルゴーニュのワインの格付けは複雑怪奇このうえありません。た だ、ブルゴーニュの格付けの「ルール」を知ると、ブルゴーニュワインの選択の方法が分かり、楽しみの幅はグンと広がります。

ですから今週は「ジュヴレ・シャンベルタン」というワインについて語る前に、ブルゴーニュワインの格付けについて、一度しっかり学びたいと思います。
そうしないと、「ジュブレ・シャンベルタン村」のワインの真価は、なかなか理解できません。「シャンベルタン」と名の付くワインは特に、ブルゴーニュの中 でも特に品質にバラつきがあるからです。おいしい「ジュヴレ・シャンベルタン」に出会うためには、多少なりとも知識を身に付けることが必要なのです。



「格付けが高いこと」と「おいしいこと」は
必ずしも連動しない
ブルゴーニュの格付けについて語る前に、フランスワイン全体の格付けを知る 必要があります。
「格付け」という言葉から想起されるのは、上から順に、「ランクを付ける」ことでしょう。では、何を基準に格付けされているのでしょうか? 何を基準とし て格付けがされているかが分からなければ、「漠然と値段の高いワインは格付けが高い」、あるいは「おいしいワインは格付けが高い」と思い込み、飲む前にさ まざまな先入観を与えられてしまいます。

フランスワインの格付けの基準とは、
●指定された地域の、より限定された地域のブドウから作られたワインほど格付けが高い
●作るための基準が厳しく法律で決められているワインは格付けが高い
という2つから成り立っているのです。

「シャブリ」の回を読んでいただいた方には繰り返しになりますが、1930年代までのフランスは、いろいろな種類や製法のワインが全国で生産され、中には 高値で取引される地域のワイン名を偽って売られていたりしました。日本で「魚沼産の米」と書けば売れるので、ブレンド米を売っていた悪質な業者がいたのと 同じです。
そこでワインに規制を設けて品質を管理していこうとする機運が高まり、1935年にINAO(全国原産地名称協会)が設立され、フランス産のワインは AOC法(原産地統制名称法)と呼ばれる法律によって、消費者はもちろんのことブドウ生産者も守られることになったのです。

フランスワイン法ではワインを4つのクラスに分けています。大きくは指定の原産地を呼称できる範囲と、ワインの製法に品質を向上させるための高い基準を設 けているかどうか、この2点が格付けのポイントになります。
その指定された原産地名を呼称できる範囲が広域であれば格付けが低く、より狭い範囲に限定されるほど高くなります。
また、指定地域で栽培できるブドウの種類を風土に合った品種に限定したり、栽培方法や醸造方法などさまざまな基準をクリアしたワインほど高くなります。
こうしてできた高い格付けのワインはその土地の特徴を持った、より個性の強いものとなります。つまり、格付けの高低と価格、おいしさは必ずしも関連がある とは言えないのです。

フランスワインの4段階の格付けとは?
このようなルールに基づいて格付けされた4つのランクを紹介しておきます。 フランスワイン法における4つのクラス(下位から)

●Vins de Table (ヴァン ド ターブル)テーブルワイン
地域の特徴がないテーブルワインで、異なる原産国(EU加盟国内)や原産地のワインをブレンドして作られます。したがって、産地名、品種、収穫年などの記 載はありませんが、瓶詰めした会社、アルコール度数、容量の明記が義務付けられています。ラベルには「Vin de Table francais」と記 載されます。

●Vin de Pays (ヴァン ド ペイ)地ワイン
「ペイ」とは「国」や「地方」を指す言葉です。「ヴァン ド ペイ」とは地域の特徴を生かした地酒で、指定された国内生産地のブドウで作られます。さらに 他のワイン生産地のブドウをブレンドすることは許されません。必ず産地名の明記が義務付けられ、ラベルには「Vin de Pays+産地名」と記載され ます。

●VDQS(Vin Delimites de Qualite Supenieure)上質指定ワイン
指定された国内産地のブドウで造られ、さらにブドウ品種、最低アルコール度数、最大収穫量、栽培方法、醸造方法などが決められています。ラベルには原産地 名称はもちろんのこと、産地の組合が発行し、公式試飲委員会の許可を得たワイングラスがデザインされている保証マーク(検査番号入)が付き、 「Appellation d‘Origine Vin Delimite de Qualite Superieure」と記載されます。

●AOC(Appellation d‘Origine Controlee)原産地統制名称ワイン
約400の指定地粋で、VDQSよりさらに厳格な規制が設けられ、これをパスした上で、INAOの検査、試飲検査に合格した最上質ワインに限られます。ラ ベルには「Appellation+産地名+Controlee」と記載されます。さらに、AOCの規定は地方、地区、村名の順に栽培指定区域が細かく なっていきますが、細かくなればなるほど土地の個性も強まります。AOCワインのこれらの格付けは後ほど詳しく説明します。
一般的には「AOCワイン」と呼ばれています。

生産量を見ると、「ヴァン ド ターブル」が最も多く、AOCワインが最も少ないのですが、日本で流通しているフランスワインの半数以上が、AOCに格付 けされているワインです。
ブルゴーニュの中でもより限定されたワインが、格付けが高い
ブルゴーニュという地域のワインに目を転じてみましょう。

ブルゴーニュ地方は先に説明した原産地呼称を許された地域で、一定の基準をクリアしたものは、ピラミッドの頂点、「AOCワイン」となることが出来ます。 そして、ブルゴーニュAOCワインの中で、さらに細かい規定によって、ランク付けがされています。これがいわゆる「ブルゴーニュ」の格付けです。

ブルゴーニュワインの格付けのポイントを整理すると、
●より限定された場所のブドウから作られたワインほど格付けが高い
●ブルゴーニュ地方では格付けが畑まで及んでいる。
となります。



ブルゴーニュ地方は、フランスの3つの県にまたがった地方の総称で、日本で言えば東北地方や関東地方といった広域の地域を指します。AOCクラスのワイン の中では、この広域の地方名を名乗ったワイン(「Appellation Bourgogne Controlee」と書かれたワイン)は一番下位に位置づけられます。
ここではブルゴーニュですが、他の地方に当てはめた場合、ボルドー(Appellation Bordeaux Controlee)やロワール(Appellation Loire Controlee)などがこれにあたります。

そしてこの区画がより狭まり、地区、村へと限定されるにしたがって格付けは高くなっていきます。このことはすなわち、より限定された地区が小単位に行くに したがってワインの味わいにはその土地の特性が強くなっていくことを意味します。「格付けが高いワインほどおいしい」というのが必ずしも正しくないのは、 こうした背景があってのことです。

ちなみに地区名ワインは、コート・ド・ニュイ(Appellation Cote de Nuits Controlee)、コート・ド・ボーヌ(Appellation Cote de Beaune Controlee)などがあります。村名ワインと言われるのが、今回のテーマであるジュヴレ・シャンベルタン(Appellation  Gevrey-Chambertin Controlee)、ヴォーヌ・ロマネ(Appellation Vosne-Romanee   Controlee)などです。

そして、ここからがブルゴーニュ地方ならではの特色です。ブルゴーニュ地方では、この地方の特徴として、村名ワインの中で、個々の「畑」をランク付けして いるのです。

ここで、地方名、地区名、村名のワインのラベルの見分け方を学んでおきましょう。それぞれ、ラベルの表示が異なることが 分かると思います。
(右図参照) 
[1]地方名ワイン
地方名は「ブルゴーニュ」です。

[2]地区名ワイン
ブルゴーニュ地方の地区名ワイン。
この地区名は、「コート・ド・ボーヌ ヴィラージュ」です。

[3]村名ワイン
ブルゴーニュ地方の村名が入っているワインです。
これは、「ヴォーヌ・ロマネ」という村のワインです。
「グラン・クリュ」「プルミエ・クリュ」という格付けは、
すばらしいワインを生むことの出来る土地に対する評価
そもそも、それぞれの村の、それそれの畑に ほとんど名前が付けられています。その中で特に素晴らしいワインを作ることの 出来る自然条件に恵まれた畑をグラン・クリュ(特級畑、Grands Crus)と、グラン・クリュほどではないけれども素晴らしい畑をプルミエ・クリュ(第一級畑、Premiers Crus)としているのです。

グラン・クリュの場合、単に「Appellation+畑名+Controlee」と書かれており、ラベルのどこかに「Grand Cru」と添えられている場合が多いようです。プルミエ・クリュの場合、「Appellation+村名 Premier (あるいは1er)Cru Controlee」と書かれている場合が多く、ラベルの中に畑名が併記されています。

また、プルミエ・クリュのワインでラベルに畑名が記載されていないものは、複数のプルミエ・クリュの畑のワインをブレンドしている場合があります。

このように畑にまで法律で格付けするのは、フランスでもこの地方だけで、このグラン・クリュやプルミエ・クリュの格付けワインは、その土地の個性が極めて はっきりと表れているワインといえます。

これは、このランクに格付けされているワインであれば全ておいしいと言うことではないのですが、このような格付けがされている畑は、日当たりがよく、栽培 されている品種との相性のよい土壌に恵まれたところに位置しており、一般的には味わいに対する評価も高いと言えることが出来ます。

ここで、プルミエ・クリュ、グラン・クリュのラベルの見方を学んでおきましょう。(右図参照)

ブルゴーニュの格付けについて、だいたい理解できたでしょうか? ちなみに、ブルゴーニュ地方に属していても、シャブリボージョレ だけはその格付けの仕 組みが若干違います。それについては、すでにコラムに書きましたので、そちらをご覧ください。

今週はここまでに留め、来週、いよいよ「ジュブレ・シャンベルタン」について語りたいと思います。
プルミエ・クリュ
「ニュイ・サン・ジョルジュ」の村名に、「1er」と記されています。さらに畑名「レ・ディディエ(Les Didier)」が記されています。

グラン・クリュ
グラン・クリュの場合、村名を名乗らず、畑名のみの表示が認められています。「コルトン・シャルルマーニュ」は、グラン・クリュの畑名です。

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