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ワ イン物語 シャブリその1
このコラムでは、ワインを毎週1本取り上げ、
その味わいや楽しみ方、ちょっとした知識などを紹介していきます。
1〜3回目は、白の辛口ワイン「シャブリ」。
「シャブリ」を知らない方も、あまりおいしくないイメージがある方も、
「すばらしいシャブリ」と出会う方法をご一読ください。
きっと、ワインの世界が少し広がると思います。
心から 感動できるおいしいシャブリがある

皆さんは、ワインを飲んで心から感動したことがありますか?

私にとって最初の感動は、「シャブリ」というワインによってもたらされました。「え???」。これが、そのシャブリを口に含んだ瞬間の感想でした。強すぎ る酸味や、わざとらしい甘味は感じません。それはさながらミネラルウォーターのようで、舌から喉まで自然に心地よく通り過ぎていきます。最後には、ふくよ かなブドウの味が残るだけです。

シャブリは日本のレストランなどでも比較的よく見る、白の辛口ワインです。「あのシャブリが、そんなにおいしいの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるで しょう。確かにモノによっては、ただ酸っぱすぎたり、アルコール臭かったりとひどいシャブリがあるのも事実。でも、実は「シャブリを飲んでからワインが好 きになった」という人は、意外にも多いのです。この極端な差は何でしょうか?

そんな疑問にお答えできるよう、3回にわたって「シャブリ」にまつわる経験をお話しながら、「感動できるシャブリ」と「そうでもないシャブリ」の違いは何 に起因するのか、お話したいと思います。
おいしいシャブリを見つけ るのは本当に苦労します。正直言って、「アタリ」は3本に1本くらい。それでも 当たったときのうれしさは、何にも変えがたいものがあります。



パリのレストランで出会った「プルミエ・クリュ」
シャブリの感動体験は、パリの5区、日本人に人気が高いサン・ジェルマン・ デ・プレに程近いカルチェ・ラタン(ラテン地 区)にある、セーヌ川も間近の「レ・ブッション(Les Bouchons)」というレストランでやってきました。

「レ・ブッション」を見つけたのは、『地球の歩き方』。当時、まったくフランス語がわからない私にとって、ミシュランガイドを読みこなすなどとうてい無理 な話で、情報源はこうした日本のガイドブックだったのです。

『地球の歩き方』の紹介では、今、当時の版がもう手元に残っていないために正確な表現ではありませんが、「ワインを原価で飲める店」というようなことが書 いてありました。

もちろん、日本と比べると、パリではフランスワインが安く買えます。とはいえ、レストランでは日本と同様、市場価格の2倍〜3倍するのが普通。さらに原価 とは、市場価格より安く出しているということです。

それほどワインに高いお金をかけたくない。でもおいしいものを飲んでみたい。そんな気持ちで、このレストランを予約したのです。

カルチェ・ラタンは、かのソルボンヌ大学を有する学生街。街の成り立ちは古く、12世紀まで遡ることができるそうです。今でも高い石造りの建物がそそり立 つ路地が入り組み、パリの中では最も中世的な雰囲気を味わえる場所でしょう。

そんな路地の一角に、「レ・ブッション」はありました。石畳の路地を歩いていくと、グレーベージュの石で作られた、古いワインカーブのような外観の間口 の小さなお店が現れます。木組みとガラスの扉から暖かいオレンジ色の光が漏れ、6月とはいえ夕方になると肌寒いパリでは、冷えた指先に灯がともるような、 そんなぬくもりを感じさせます。

さて、本題。記憶によれば、オードブル、魚料理、肉料理、デザートのMENU(ムニュと読みます。コース料理ということです)で5000円程度。プリフィ クス(メニューの中身があらかじめ決まっている)ですが、それぞれ2〜3の料理から好きなものを選ぶことができます。パリのレストランでも、アラカルトで のオーダーは可能ですが、このMENUで選択するほうが料金的にはリーズナブルです。

その日、ワインリストに並ぶ数多いワインの中から、真っ先に目に付いたのは「シャブリ プルミエ・クリュ」。ワインを勉強し始めて間もない私に、「プルミ エ・クリュ」という文字が燦然と輝いて見えたのです。価格も3000円程度。日本の市場価格ではもっと高いですし、パリで買ってもこんなに安くは飲めませ ん。ましてやレストランで……。

この「プルミエ・クリュ」という言葉は、冒頭のようなすばらしい体験をするための一つのキーワードなのです。その理由を、これからお話しましょう。
こうしたパリの町並みは、 主に19世紀半ばの「オスマンの大改造」と呼ばれる都市計画によるもの。中世の 町並みを見られる場所は、実は少ないのです。
フランスワインは、AOCワインを頂点に、VDQS(上質指定ワイン)、ヴァン・ド・ペイ(地酒)、ヴァ ン・ド・ターブル(テーブルワイン)と明確な階層があります。AOCワインというだけで、ある程度、品質に基準が設けられているといえます。
「シャブリ」は生産地名。一定の基準をクリアしたワイン
「シャブリ」という名前は、実はワインの生産地そのものの名前です。そもそ もフランスワインの中で、「シャブリ」など生 産地の名前がそのままワインの名前になるようなものは、フランス国内での指定されたワイン生産地で生産され、一定の基準をクリアしたワインであるというこ とができます。

フランスでは1930年代までいろいろな種類や製法のワインが全国で生産され、なかには産地名が付くだけで高値で取引されるワイン名の名を借りたまったく 違うワインもありました。そこでワインに規制を設けて品質を管理していこうとする動きが出て、1935年にINAO(全国原産地名称協会)と呼ばれる政府 機関が設立され、フランス産のワインはAOC法(原産地統制名称法)と呼ばれる法律によって、消費者はもちろんのことブドウ生産者も守られることになった のです。

シャブリは、原産地呼称が許されるワインです。図1、シャブリのラベルの写真を見てください。小さく「APPELLATION CHABLIS CONTROLEE」と書いてあります。フランスワインの場合、この「APPELLATION ○○ CONTROLEE」とあるワインは原産地呼称でき るワインであり、一般的に「AOCワイン」と呼ばれ、○○のところに産地名が入ることになっています。(AOCワイン以外のワインについては、また後日お 話したいと思います)。
「APPELLATION」と「CONTROLEE」の間に産地名が入ります。ここでは間ではなく上です が、「CHABLIS」と文字が入っています。
プルミエ・クリュの秘密−−シャブリには格付けがある
そのシャブリの中で、先ほど言った「プルミエ・クリュ」とは、何でしょう か。「プルミエ」とは「Premier」と書 き、フランス語 で「1番目の」という意味。「クリュ」は「Cru」で、ワインやブドウの畑(区画)を意味します。つまり「シャブリ プルミエ・クリュ」は「シャブリの1 級畑(区画)」と訳せます。このように同じシャブリでも作られる畑(区画)によって上位に位置づけられるワインがあるのです。

これはブルゴーニュワインの大きな特徴の一つで、ワインの生産される畑(区画)によってランク付けをしています。

このプルミエ・クリュとは、直訳とは異なり、実際には格付けとしては2番目になります。上位に「グラン・クリュ」、訳して「特級畑(区画)」という格付け が存在します。なぜか、1番目のという「プルミエ・クリュ」は、「グラン・クリュ」の下になりますから、ややこしいですよね。ラベルにもグラン・クリュ、 プルミエ・クリュもしくはそれに該当する畑名が明記されますのでラベルからも見分けが付きます。

このグラン・クリュやプルミエ・クリュ格付けの畑(区画)は、日当たりがよく土壌に恵まれたところに存在していてブドウを造る好条件をもつ場所といえま す。

こうしたグラン・クリュやプルミエ・クリュの格上のワインは、普通のシャブリ、プティ・シャブリよりも、一般的においしいとされています。私がパリの 「レ・ブッション」で、「プルミエ・クリュ」に惹かれたのは、こんな理由からだったのです。

まずは第一段階として、「プルミエ・クリュ」「グラン・クリュ」とあるシャブリを飲めば、おいしいワインに出会える確率が高いことを覚えておきましょう。
シャブリでは上から「シャブリ グラン・クリュ(Chablis Grands Crus)」「シャブリ  プルミエ・クリュ(Chablis Premiers Crus)」「シャブリ(Chablis)」の順で格付けされており、その下に「プティ・シャブ リ(Petits Chablis)」という日本ではあまりお目にかかりませんが最下位に位置するワインもあります。

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