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ワ イン物語 | シャンパーニュその2 |
シャンパーニュその2です。 その1では、マム社のカーブ見学を通じて、 ノンヴィンテージとミレジメの違い、造り手の業態の違いを説明してきました。 今回も見学を続けます。 シャンパーニュの「甘辛」を決めるものとは? 使用できる品種はなんでしょうか? |
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なめらか
な泡と味わいをつくる独特の製法 |
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再び、肌寒いマム社のカーブの訪問に沿って、シャンパーニュの製造方法の説
明を続けます。 先に説明したティラージュ(瓶詰め)の後、ドゥジエム・ファルマンタシオン(Deuxieme Fermentation)という瓶内二次発酵が行われます。瓶内では酵母が糖を分解し、再発酵することによって、アルコールと二酸化炭素ガス、滓が生じ ます。栓がされているためガスはワインの中に溶け込んでいきます。 そして発酵が終わったシャンパーニュはヴィエイスマン・シュル・リー(Viellissement sur lie)と言われる熟成へと進みます。王冠で封印されたワインは炭酸ガスが含まれているため、通常のワインで行われる酸化熟成はおきません。発酵時に発生 した酵母の死骸である滓とともに寝かせることによって、酵母が分解作業で取り込んだうまみ成分(アミノ酸等)がワインに徐々に戻されていきます。これが シャンパーニュの特徴のひとつであるイースト香をもたらし、複雑な味わいが完成していきます。 その後、熟成させた瓶を瓶口を下に向けて並べるミズ・シュル・ポワント(Mise sur pointe、倒立)が行われ、瓶内発酵で瓶の中に生じた滓を除去するために、滓を瓶口へ集めていきます。ピュピトルに刺さった瓶に振動を与え、5〜6週 間に渡って毎日瓶を1/8回転ずつ揺らしながら回し、傾けていき、瓶の側面にたまっていた滓を瓶口に集めていきます(Rumuage ルニュアージュ)。 次はデゴルジュマン(Degorgement 滓引き)。マイナス20度の塩化カルシウム溶液に滓のたまった瓶口を4センチほどつけ込み凍らせます。王冠 を抜くと凍った滓の部分が圧力で飛び出し、滓を取ることができるのです。 |
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甘口、辛口を分ける「門出のリキュール」 |
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さて、この後のドサージュ(Dosage)も、シャンパーニュの味わいを特
徴づける重要なプロセスです。 デゴルジュマン(滓引き)で減ったワインの部分に、シャンパーニュの原料となったワインに糖分を加えた甘いリキュール(これをLiqueur d’Expedition リキュール・デクスペディシオン、門出のリキュールという)を加え、味を調整するのです。このワインの甘さ、添加する量によって甘口、辛口など甘辛の区別 がつきます。 その甘辛の種類は、下記の通り。グラム数はリキュール・デクスペディシオンの添加度合いを示しています。 ●Brut Zero ブリュット ゼロ (Brut Non Dose ブリュット・ノン・ドゼ、Ultra Brut ウルトラ・ブリュット、Brut de Brut ブリュット・ド・ブリュット、Brut Sauvage ブリュット・ソヴァージュともいう) 0グラム/リットル ●Extra Brut エクストラ・ブリュット 0〜6グラム/リットル ●Brut ブリュット 6〜15グラム/リットル ●Exra Dry(Sec) エクストラ・ドライ(セック) 12〜20グラム/リットル ●Sec セック 17〜35グラム/リットル ●Demi Sec ドゥミ・セック 33〜50グラム/リットル ●Doux ドゥー 50グラム以上/リットル そして最後、ブシャージュ(Bouchage、打栓)。シャンパーニュの見た目の違いは、コルクを打った後、さらに針金でご固定すること。さらにコルクも まっすぐではなく、先に向かうにつれて傾斜がつき、炭酸ガスで簡単には抜けないようになっています。こうして長い時間と丁寧な手仕事を経て、ようやくシャ ンパーニュはリリースされます。 スパークリングワインの場合、ワインを造ってから炭酸ガスを添加してもOK(中にはシャンパーニュと同様、あるいは近い手順を踏んで造っているスパークリ ングワインの造り手もあります)。そう考えると、シャンパーニュの価格帯が一般的に高いのも、十分納得がいきますよね。 |
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ブラン・ド・ブランはシャルドネのみで造られる |
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製造の一連のプロセスを見た後、いよいよ試飲です。試飲したシャンパーニュ
は、まずBrut。最も一般的な辛口のシャンパーニュです。一口飲むと、糖分をあくまで感じない、キリッとした味わいが広がります。 そして、次に、ロゼ・シャンパーニュ、そしてブラン・ド・ブラン(Blanc de Blanc)へと試飲は続きます。 ブラン・ド・ブランとは、白ブドウだけで造られたシャンパーニュをいいます。シャンパーニュで使われるブドウ品種は、黒ブドウのピノ・ノワール、ピノ・ム ニエ、白ブドウのシャルドネの3種類のみ。その中でも、シャルドネのみを使ったブラン・ド・ブランは「ちょっと高級」というイメージがあり、また「シャル ドネ好き」が多いこともあって人気が高いシャンパーニュの一つです。 ちなみに、ブラン・ド・ノワール(Blanc de Noir)は、黒ブドウ品種であるピノ・ノワール、ピノ・ムニエのみで造られたシャンパーニュ、そして、ロゼ・シャンパーニュは黒ブドウ、白ブドウのどち らも使用できますが、調合の段階で赤ワインを加える方法と、黒ブドウからロゼワインを造り、それを発酵させる方法の2種類があります。 マム社のロゼ・シャンパーニュは、「コルドン・ロゼ」と言われます。肩ラベルのバラの絵は藤田嗣治(レオナール・フジタ)が描いたもの。フジタ好きの私 は、このボトルが欲しくてマム社を訪れたといっても過言ではありません。しかし、残念ながらマム社でも在庫なし。日本でも、フランスでもあまりお目にかか ることができないのです。5、6店舗、ランスのワインショップを探して歩いて、ようやく手にしたときの喜びは忘れられません。 ランスからパリに帰って、すぐにこのコルドン・ロゼを開けたいと、気持ちは逸りましたが、それをじっとガマンしました。知人のソムリエさんから、「シャン パーニュは長い距離を動かした後、最低2週間は落ち着かせてから飲んで」と聞いたことがあったからです。シャンパーニュは、どこまでもきめ細かい泡が身 上。動かしてしまった後は泡が落ち着いておらず、きめの粗い泡になってしまい、ざらざらとした感触になるのだそうです。 |
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エンタテインメント性の高い見学ツアーも |
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翌日に訪ねた、パイパー・エドシック社の訪問についても書いておきましょ
う。ここは、ちょっと遠いですが、ランスの中心からギリギリ徒歩圏内です。そして英語、フランス語ができなくても楽しめます! 何しろ日本語のガイド(自
動音声)付きカートに乗って見学ができます。さしずめ、「カリブの海賊」のワイン解説版といったところです。 カートに乗る前に言語を選択でき、カートごとに設定してくれます。カートに乗り込むと、幅2〜3メートルの通路を通りぬけ、パイパー・エドシック社の沿 革、使用しているブドウ品種、シャンパーニュの醸造方法などを日本語で解説してくれます。随所にイメージが分かりやすいように人形や模型も配され、照明も 凝っているので、エンタテインメントとしても楽しめました。 最後に試飲が1杯ついて、当時6.5ユーロ。コスト・パフォーマンスの高い見学ツアーです。 3回目の次回は、ここまで触れてこなかったシャンパーニュの「格付け」について、そして、ドン・ペリニヨンに代表されるプレステージ・シャンパーニュのお 話をしたいと思います。 |
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