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ワ イン物語 | シャンパーニュその3 |
シャンパーニュの最終回、その3です。 その1、その2 では、マム社のカーブを訪れながら、 シャンパーニュの醸造方法や作り手、味わいを決めるものについて、 紹介してきました。 そして、最後はプレステージとグラン・クリュについて。 より質の高いシャンパーニュのお話です。 |
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シャン
パーニュの名物を食す |
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フランスの地方を訪れる楽しみは、ワインももちろんですが、その地方の郷土
料理を食べることもその一つです。シャンパーニュ地方はフランス北部の内陸の地域。海の魚よりは川の魚、肉も保存の効く料理が名物です。 私がランスの滞在で選んだレストランは「Le VIGENRON」。ブドウ栽培農家という意味のレストランです。ランスの大聖堂から歩いて10分ほど、住宅街の真ん中に、ひっそりと佇んでいます。扉を 開けると、中は本当に開店しているのかどうかわからないくらい薄暗く、恐る恐る「Bon Soir!」というと、中から給仕が出てきて、温かく迎えてくれました。席に着いたころようやく目が慣れて、店中に貼られた古いシャンパーニュの広告やラ ベルが見えてきました。壁の色も緑、赤、青とカラフルに塗られ、それに合わせた色とりどりのテーブルクロスが楽しさを醸し出しています。このレストランが 別名「Ptit Musee」(小さな美術館)と呼ばれるのも納得です。 さて、肝心の料理選びです。シャンパーニュ地方の郷土料理がズラリと並び、思わず悩んでしまいました。じっくりと料理を選ぶために、食前酒にマール・ド・ シャンパーニュをとることに。これはシャンパーニュを造った残りかすを使ったオー・ド・ヴィです。けっこう強く、甘味が強いお酒ですが、残りかすを使用す る割にはその香りの強さに驚かされます。 ちなみに、あまり知られてはいませんが、シャンパーニュ地方では赤ワインも作っています。コトー・シャンプノワという名前のワインで、かなり軽い味わいの ワインです。 |
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強い料理にも負けないシャンパーニュ |
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そして悩んだ末、ソテーしたフォアグラをパン・デピスで挟んだアントレ、そ
してメインに私はアンドゥイエットを、妻はサーモンのバターソースソテーをオーダーしました。パン・デピスとは、シャンパーニュ地方でよく食べられている
いわばジンジャーブレッドです。かなりスパイシーな香りがします。サーモンもシャンパーニュの名物で、川魚らしい苔の香りが強くします。そしてアンドゥイ
エットは臓物をソーセージ状にしたもの。そもそも臓物ですし、その香りを和らげつつ引き立てるスパイスも多用され、独特の風味の一皿です。 そんな香りの強い料理に合うシャンパーニュを相談すると、「この強い料理に負けないのは、つくりのしっかりしたプレステージ・シャンパーニュですね」とい う答えが返ってきました。 プレステージ・シャンパーニュとは、各メゾンがトップ・キュベとして位置づけているシャンパーニュのことです。モエ・エ・シャンドン社のドン・ペリニヨン は、最も有名なプレステージ・シャンパーニュの一つです。造り方は各メゾンそれぞれ。熟成期間をより長く取ったり、より厳選されたブドウを使用したりと、 最もすばらしいシャンパーニュを造るべく、それぞれのスタイルを追求し、最高の表現をしようとしています。だからこそ、毎年リリースされるものではありま せん。 そして、私たちが選んだのはランソン社のノーブル・キュヴェ・ブリュット。繊細ながらも骨格はしっかりとしており、川魚やアンドゥイエットの強い香りに負 けず、しかも味わいを引き立てる役割を果たしてくれました。 素晴らしい料理とシャンパーニュのマリアージュ。「小さな美術館」の醸し出す空気が、さらにこの夜のスパイスとなったのです。 |
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グラン・クリュは336の畑中、17のみ |
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最後になりますが、これまで触れてこなかったシャンパーニュの格付けについ
てお話しします。シャンパーニュでは他の地方とは異なる独特の格付けがあります。畑を等級付けしており、最高は100%、最低は80%の21段階に分けら
れています。このパーセント表示は、最高の畑のブドウの価格を100%とし、各畑のブドウの価格がいくらになるかによって数値化されているのです。現在
336クリュ中17クリュが100%Cruに認められており、この格付けのみがグラン・クリュと認められています。 アラカルトでオーダーし、シャンパーニュも含めて170ユーロくらい。十分満足してレストランを出たのは22時。約3時間半にわたって、料理とシャンパー ニュを楽しんだことになります。 フランス北部のシャンパーニュは22時を過ぎてもうっすらと明るく、薄墨色の夕闇が広がりつつありました。歩く道すがら、ランス大聖堂の脇を通ると、ゆっ くりと夜が更け、群青色の夜空にライトアップされた大聖堂がぽっかりと浮かんでいます。日本の5月の初めくらいの夜のような、心地よい肌寒さの中で、いつ までも眺めていたい光景でした。 |
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