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ワインを「楽しむ」ための初歩講座3は、今夜の料理に合わせて
ワインを買いたい、と思うときにお読みください。
ワインと料理の相性は奥が深いですが、
ちょっとした気遣いがすばらしい取り合わせを生み出します。 |
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「肉料理」でも「白」を合わせたほうがいい場合がある!? |
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ワインはもちろん、単体で飲んでもおいしいのですが、料理との相性で、そのおいしさが2倍にも、3倍にもなったりします。しかし、何度経験を重ねても、その相性の奥深さに驚かされること、迷わされることがしばしばあります。
たとえば、「肉には赤」という「すりこみ」が私たちの中には存在します。しかし、実際には、こくのある白ワインと絶妙なマリアージュを見せる肉料理もあります。つまり、これが「絶対」というものはないのです。
ここでは、ワインと料理を合わせるための必要最低限のポイントだけ紹介します。もちろん料理との相性については個人の好みもありますし、紹介するポイントは、やはり「確率論」に過ぎません。あとは皆さんが多くの経験をすることによって、皆さんなりの「セオリー」を見つけてください。
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POINT1:
ワインと食材のイメージ色を合わせる |
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食材が赤っぽければ「赤」、白っぽければ「白」
主に塩で味付け、軽くスパイスやハーブなどで香りをきかしたような、素材そのものを味わうような比較的シンプルな料理は、メインとなる食材の色とワインの色を合わせてみましょう。
たとえば牛肉などのステーキは、色にたとえると赤やこげ茶をイメージしますね。そんなときには赤ワインを選びます。
鶏肉の香草焼きは黄色とか緑がかった白をイメージするので、白ワインを選びます。
えびや甲殻類の網焼き、魚の蒸し物やグリルはオレンジ色や白、ピンクなどがイメージできますから、ロゼワインや白ワインを合わせます。
とても単純なセオリーですが、そう外れることはありません。ぜひ、目安に覚えておいてください。
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POINT2:ワインと調理方法の重さのイメージに合わせる |
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同じ素材でも、調理方法によって選ぶワインに幅がある
とはいえ料理は、素材をシンプルに焼いたり、蒸したりするものばかりではありません。ソースをかけたり、ソースで煮込んであるものもたくさんあります。そうした場合には、料理の重さ、つまり調理法に由来する重さと、ワインの重さのイメージを合わせるのも1つの方法です。
鶏肉を例に鶏肉を例にとりましょう。同じ素材でも、調理のバリエーションで、私は合わせるワインを変えていきます。
・鶏肉のハーブ焼き・・・すっきりとしたフレッシュな白ワイン(ソーヴィニオンブランなど)
・鶏肉のクリームソース煮込み・・・コクのある樽のきいた白ワイン(シャルドネなど)
・鶏肉のトマトソース煮込み・・・フレッシュなニュアンスのある赤ワイン(ピノ・ノワール、メルロなど)
・鶏肉のグリル スパイス風味・・・スパイスのニュアンスのある赤ワイン(シラー、グルナッシュなど)
鶏肉に限らず牛肉でも、にんにくの香りを付けただけの料理は、あっさりとさえ感じることがあります。そんなとき、ちょっと樽のきいた白ワインを合わせたりします。
同様に、魚料理だからあっさりした白ワイン、という「すりこみ」も捨てたほうがいい場合もあります。濃厚なクリームソースがかかったものであれば、コクのあるしっかりした白ワインや軽めの赤を合わせたりするのです。
そんな風に考えると、ワインの楽しみ方の幅が広がるのではないでしょうか?
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POINT3:ワインと料理の香りや風味を合わせる |
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似通った特徴の料理とワインを合わせ、相乗効果を狙う
似た特徴を持ったもの同士は、合わせやすいものです。
たとえば料理の中でワインが調味料の役割を担っている場合、同じ種類のワインを合わせるといいでしょう。フランスのワイン産地で、地元の食材をワインで風味をつけたりする料理が多いのはこのためでしょう。料理の風味や香りによる相乗効果が、ワインをさらにおいしく感じさせるのです。
また、ブドウの本来の特徴や熟成に起因するワイン独特の風味と、似通った食材の風味を合わせるのもおすすめです。
たとえば、きのこの香りは赤ワインのもつ土や木の香りと似ており、コクのある赤ワインとの相性は抜群です。また、樽のきいたタンニンの強いワインは、ステーキやグリルの焦げた風味と相性がいいです。さらに、フレッシュな白ワインにはハーブや柑橘系の香りがあるので、フレッシュハーブで味付けした料理には合わせやすいと言えます。
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POINT4:「卓上調味料」としてワインを使う |
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「酸がほしい」料理と酸の強い料理を合わせる
「相乗効果」のお話をしましたが、例外は「酸味」です。酸味の強いワインに酸味の強い料理を合わせると、ケンカをしてしまうことが多いのです。
酸が強いワインの場合、逆に「酸がほしい料理」と合わせるといいと思います。「酸がほしい料理」とは、たとえばカキや魚のフライやシンプルなグリルなど、卓上でレモンやライムを絞って食べる料理を想像するといいでしょう。ワインの酸味が、レモンやライムの代わりの役割を果たしてくれます。
また、サラダは普通であればレモンや酢とオイルでドレッシングを作るのですが、オリーブオイルや塩だけかけて、酸味の強いワインと合わせるのもいいでしょう。
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POINT5:「脂」の強い料理には、タンニン、甘み |
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タンニンが脂を流し、甘みは脂を中和する
特にフレンチを食べるとき、「脂」の強さに辟易することがあります。フォアグラやカモのコンフィ、リエットなど、少量ならおいしく感じても、途中で飽きてしまうこともあるはずです。そんなとき、助けてくれるのがワインのタンニンと甘みなのです。
タンニンの強いワイン、たとえばシラーやグルナッシュ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどで造られたワインは、舌にまとわりつくような脂を流してくれると言われています。
また、ボルドー地方のソーテルヌに代表される、とても甘味の強い貴腐ワインやアルザスの甘口ワインは、脂を口の中で中和してくれる役割を果たします。「フォアグラにソーテルヌ」と定石のように言われるのは、そういう理由なのです。
ぜひ、「脂」の強い料理と甘口ワインを試してみてください。
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POINT6:和食、中華、エスニック! |
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家庭料理とワインの相性を探る
パスタやピザはともかく、ご家庭でフレンチやイタリアンを食べる機会は、そう多くないと思います。普通は和食を軸に、中華やアジア系の料理が中心ではないでしょうか。それは、ワインを職業とする私たちだって同様です。
では、いわゆる家庭料理を食べるときにワインを飲まないかというと、そんなことはありません。ワイン好きの私たちは、和食も中華もエスニックも、ワインとともに楽しんでいます。下記に簡単ですが、和食、中華、エスニックとワインを合わせる方法を書いておきます。
刺身も合わせるワインによって、まったく生臭さを感じずに食べられます。
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和食
基本的には、素材を活かした料理が多いですから、POINT1で紹介した「ワインと食材のイメージ色を合わせる」という方法を取っています。和食の場合、魚に赤を合わせることはあまりありません。シンプルな調理法が多いために、赤ワインと合わせると生臭さが際立ちます。
多くの方に質問されるのが、「刺身」です。「生臭くなるのが心配」とおっしゃいます。そんなとき、そもそも刺身はどんなふうに食べるか考えてみるといいでしょう。ワサビやカボスなどかんきつ類で臭みを消します。ワインにそれを当てはめると、酸味やハーブの香りが強い白ワインが好相性ということになります。
中華
中華料理の中でも、あっさりとした魚介系の炒めものなどは、スッキリした白ワインを合わせて問題ありません。
一方、中華の場合、脂、甘さ、スパイスが強い料理もたくさんあります。脂へのセオリーで言うならば、タンニンの強いシラーやグルナッシュ、ガメイを使った赤ワインは相性がいいです。シラーやグルナッシュ、ガメイはシナモン、丁子、八角など中華系スパイスの香りが強いので、中華料理ともぴったりです。
同じように中華系のスパイスの香りが強く、また、甘みもあるので中華との相性がいいとよく言われるのが、ゲヴュルツトラミネールで造られた白ワインです。
クスクスはやはり、本家本元のモロッコワインが好相性です。
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エスニック
フランスでは、ベトナム料理や北アフリカ料理を実はよく食べます。彼らはそうしたエスニック料理とともに、ワインを飲みます。ですから、エスニックとワインは別に相性が悪いわけではないのです。
同じエスニックでも、ハーブの強いベトナム料理とは、ハーブ香の強いソーヴィニオンブランがいい相性です。
一方、カレーやクスクスなどスパイスの強い料理とは、スパイス香の強いシラーやグルナッシュを合わせるといいでしょう。こってりとした赤ワインが、スパイスの刺激を中和する役割も果たしてくれます。エリアで言えば、モロッコのワインもお勧めです。現地の人々が、スパイスの強いクスクスや肉料理とともに飲んでいるのですから、合わないはずがありません。
とはいえ、あまり辛い料理の場合、舌がマヒしてワインの味が分からなくなりますから、ワインを飲まない、というのも一つの選択肢です。
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