|
ワインを「楽しむ」ために、最低限の知識をお伝えする初歩講座
2は、
自分好みのおいしいワインを買う方法です。
ワインの知識がなくても、ちょっとした工夫で好みのワインを見つけられます。 |
|
相
談のコツをつかめばおいしいワインが買える |
|
信頼のおけるワインショップを見つけたら、相談の仕方を工夫す
れば、自分好みのワインに出会える確率はさらに高まります。
ワインの知識がないから、あるいはそれほど高いワインを買うわけではないから、お店の人に聞くのが恥ずかしいという人がいます。でも、どんなにワイン通の
人でも、飲んだことのないワインは、どんなワインなのかお店の人に聞くことも多いですし、相談せずに買ったらワインが思っていたものと違ったり、あまりお
いしくなかったりすることは結構あるものです。
とはいえ、無闇に「おいしいワインを探しています」というだけでは、お店の人も困ってしまいます。ここでは、相談のポイントについて、お伝えしたいと思い
ます。
|
POINT1:
その日のワインの予算を伝える |
|
「高いワインはおいしい」という常識はまず
捨てる
値段とワインのおいしさは必ずしも一致しません。それはなぜか。「おいしさ」は、本人の好みに大きく左右されるからです。たとえば、現在この文章を書いて
いる私、Iですが、こってりとした白ワインがあまり得意ではありません。1本1万円以上もするような、ブルゴーニュの銘醸ワインよりも、2000円程度で
買えるミュスカデを好んで飲んだりします。ことほどさように、好みに合わなければ、いくら高いワインでも、そのワインのおいしさを十分堪能することはでき
ないのです。
「高いものはおいしい」という常識を捨てて、好みを知ることこそ、おいしいワインにたどりつく近道です。
お店のスタッフに、今日ワインにこれくらい出してもいいな、という予算を正直に伝えることが大事です。スタッフの方は、予算の前後で探してくれるはずで
す。
「高いワイン」は厳選されたブドウ、恵まれた自然条件下で造られる
とはいえ、一般的にいいワインはいいブドウだけを厳選して造られたり、自然などの好条件に恵まれた限られた地域などで作られるため値段も高くなることが多
いようです。そのようなワインはより香りが高く、凝縮した果実味やその土地の個性をはっきりと持つようになります(もちろん、作られる本数が少なく、希少
性が高いために値段が高騰する場合もありますが)。
ですから、先ほどの話とは少し矛盾しますが、高い値段を出せば、好みはさておき、おいしいワインに出会える可能性は高くなるともいえます。
エリアによって、平均的な価格に差がある
また、ワインが造られたエリアによっても、ずいぶん金額は左右されます。
ワインはブドウという「農産物」を使った「加工品」です。ですから、土地の値段や人件費がその最終商品に大きく影響を与えます。もちろん例外はあります
が、南米や南アフリカといったエリアのワインは安く購入することが可能ですし、オーストラリアのように、広大な土地を持つ国のワインも、フランスやイタリ
アに比べると低価格な場合が多いようです。
フランスワインに限れば、ボルドーとブルゴーニュは高級ワインの「双璧」です。伝統もあり、秀逸な造り手の多いこの地方のワインは、これも例外はあります
が、他のエリアのワインと比べると高額で取引されています。同じフランスでも、ロワールや南のラングドック・ルシヨン、プロヴァンスのワインなどは、比較
的低価格だといえるでしょう。
エリアを選ぶことで、低価格でも丁寧に造られたおいしいワインに出会える可能性はあるわけです。どうしても「ブルゴーニュが好き」「ボルドーが好き」とい
う人は、多少高めのお金を出すことは、覚悟したほうがいいかもしれませんね。
|
POINT2:
ワインを購入する目的を伝える |
|
目的を伝えれば、お店の方のイメージも広が
る
1人で、家族で楽しむ以外に、たとえば誰かのお祝いでプレゼントにする、友人を呼んでホームパーティーをする、あるいはパーティーに呼ばれて持ってい
く……そんな風にワインを購入する目的はさまざまです。そうした目的をショップの方に伝えることで、最適の一本を見つけられる確率が高まります。お店の人
も、どこで、どんな風に、どんな人が何人くらいで、どんな料理と飲むのかが分かれば、イメージが広がるからです。
お祝いやお礼にプレゼントするなら、相手の年齢層、食嗜好(こってりした料理が好き、和食党……など)、ふだんどんなお酒を飲んでいるのかなども伝えると
いいでしょう。
パーティーを開く、あるいはパーティーに持っていくなら、料理は和食なのかエスニックなのか、それともイタリアンなのか、何本くらい必要なのか、種類は変
えるべきなのかなどを考えておいてください。。
|
POINT3:
気に入ったワインのボトルの外観をメモする |
|
同じワインではなくても、似た味わいのワイ
ンを探せる
たまたま買ったワインがおいしかったり、レストランで飲んだワインがおいしかったりしても、「2度と同じワインに出会えない」という話を聞きます。これは
もっともな話で、ワインには無数の種類があって、同じワインがどのお店、どのレストランにも置いてあるわけではありません。
とはいえ、「おいしい」と感じたワインを飲んだとき、その特徴をメモしておけば、同じワインでなくても、同じような味わいのワインに出会えることが多いの
です。次にお店やレストランに行ったとき、そのメモを見せれば好みのワイン探しに必ず役立つので、ぜひ実践してみてください。
ボトルの外観をメモしておく
フランスに古くからある産地では、産地ごとに同じタイプのボトルを使う傾向があり、ボトルの形やで産地が分かります。かなり大きなくくりの分け方なのであ
まり精度高くワインを限定することはできませんが、メモをする暇がないときにはお勧めです。また、過去に飲んだおいしいワインはどんなボトルの形だった
か、思い出してみましょう。
ブルゴーニュ
よく、「なで肩」と表現されるボトルです。フランス・ブルゴーニュのほか、フランス国内では、ロワールやコート・デュ・ローヌのワインのボトルにこの形が
多く使われています。また、世界を見たとき、ブルゴーニュワインの代表品種であるピノ・ノワール、シャルドネで造られたワインも、多くはこの形のボトルを
使っています。
ボルドー
ブルゴーニュの「なで肩」に対し、「いかり肩」と表現されます。ボルドーのワインのほか、ボルドーの代表品種であるカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロを使
用して造られたワインには、このボトルが使われていることが多いです。
シャンパーニュ
フランス・シャンパーニュ地方でつくられるスパークリング・ワイン、シャンパーニュのボトルの形状は、このようにどっしりした重厚感があります。世界の他
のエリアで造られるスパークリング・ワインも、微妙に形は違いますが、やはり厚みのあるどっしりした印象のボトルが多いです。
アルザス
天に伸びる、ゴシック様式の尖塔のようなイメージがあるのが、アルザス地方のワインのボトルの特徴です。アルザスワインの代表的な品種といえば、リースリ
ング、ゲヴェルツトラミネール、ピノグリなど。こうした品種を使用する世界の他のエリアのワインも、この形状のボトルを多く使っています。
|
POINT4:
ラベルを保存する、内容をメモする 1〜産地 |
|
ラベル(フランス語ではエチケットと言います)は、そのワイン
の素性を表す情報が、ほとんど入っています。ですから、おいしいワインを飲んだら、ラベルを取っておき、それをお店の方に見せれば、同じようなワインを探
してくれるはずです。
ラベルを取るには、ラベル取り専用のシールが10枚1000円程度で、ワインショップなどで販売されています。本当にキレイに取れますから、ラベルを保存
したいなら、この方法がお勧めです。
透明のシールを貼って、しばらく置いてはがすとラベルが取れ、台紙に貼り付けるだけ。保存に
便利です。
|
このシールがないとき、私はお風呂や洗面所に水を張り、空瓶を1時間くらい浸しておく方法を取っていました。そうすると、ほとんどのワインはラベルがキレ
イに剥がれます。ただ、水にひたすので、どうしてもブヨブヨにはなりますが......。
レストランでも、「このワインはおいしかったのでラベルをほしいのですが」とお願いすれば、いただける場合が多いようです。
ジュヴレイ・シャンベルタン村のワイン。「Appellation Geveray-
Chambertin Controlee」という文字が見えます。
|
ラベル自体を保存するのではなく、メモを取るのであれば、フランスワインで注目すべきは、ラベルの中の「Appellation ○○○
Controlee」という言葉です。その言葉の○○○の部分が、そのワインの産地を表します。
フランスワインは産地ごとに作られる品種が変わり、しかも法律で厳しく規定もされているので、味わいや好みの違いも地域によって分類することが一番の早道
であると思います。そうした地域の個性にとらわれない廉価なワインも多く存在しますが、一般的にはある程度の値段がするワインは、その法律によって厳しく
管理され、土地や使用しているブドウ品種の個性が際立っている場合が多いのです。ですから、産地が分かれば、ある程度自分の好みが分かってくるのです。
イタリアやスペインなどは、名称は異なりますが、産地によって規定されている点は、フランスとほぼ同様と考えてください。
この産地の表記については、「ワイン物語〜シャブリ」で
詳しく説明していますので、そちらもご覧ください。
|
POINT5:
ラベルを保存する、内容をメモする 2〜品種 |
|
これはオーストラリアのヤラ・バレーというところで造られたピノ・ノワール。中央に
「PINOT NOIR」という文字が見えます。
|
一方、アメリカやオーストラリア、ニュージーランド、南米、南
アフリカなど、いわゆる「新世界」と呼ばれる地域で造られるワインの場合、フランスやイタリアほど土地による細かい規定はされていません。では、どこに自
分の好みを見つける手がかりがあるのでしょうか? それは、ブドウの品種です。これらの国々で造られたワインは、必ずボトルにブドウの品種が書かれていま
す。
下に、代表的なブドウ品種を挙げておきますので、その味わいを覚える参考にしてください。
■赤ワイン用の品種
カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)
フランスのボルドー地方を中心に、世界中で栽培されている品種です。できるワインは濃い赤、黒に近い紫色で、カシスの香りや土系のニュアンスが感じられま
す。力強いタンニンと複雑さを持ち、長期熟成に耐えるワインとなります。
メルロ(Merlot)
フランス・ボルドー地方のサンテミリオン、ポムロール地区を中心に、世界中で栽培されています。濃い赤、黒に近い紫をしながらも、タンニンはカベルネ・
ソーヴィニヨンほど強くなく、果実のフレッシュさが強いのが特徴です。強さの中にも、なめらかさと優しさが感じられます。香りは、ブルーベリー、きのこ、
スパイス、革のニュアンスがあると言われます。
ピノ・ノワール(Pinot Noir)
フランス・ブルゴーニュ地方を中心に、世界中で栽培されている品種です。この品種から造られるワインはどちらかといえば淡い赤紫をしており、ガーネット色
と表現されることもあります。タンニンがやわらかく、しっかりとした酸味とのバランスにより、優雅で繊細なワインとなります。いちご、さくらんぼ、ドライ
ハーブ、土系のニュアンスがあると言われます。
シラー(Syrah)
フランスのコート・デュ・ローヌ地方の北部地区を中心に、世界中で栽培されています。ただし、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、「シラーズ
(Shiraz)」と発音します。濃い赤、紫をしており、強いタンニンを持ちます。スパイシーな印象が際立つのもこの品種の特徴でしょう。他にプラム、
タール、革のニュアンスがあると言われます。
グルナッシュ(Grenache)
フランスのコート・デュ・ローヌ、南部地区を中心に世界中で栽培されています。色は黒っぽくない赤、紫です。果実味に富んだ、スパイシーなワインとなりま
す。香りは熟したプラム、革、土系のニュアンスがありますが、シラーほどタンニンは強くありません。
ガメイ(Gamay)
フランス・ボージョレ地区で作られている品種です。やや淡い赤、紫をしており、タンニンが少なく、果実味に富んだフレッシュでキャンディのような甘みのあ
るワインとなります。さくらぼ、プラム、ベリー系のジャムのような香りがします。
■白ワイン用の品種
シャルドネ(Chardonnay)
フランスのブルゴーニュ地方を中心に、世界中で栽培されている品種です。品種自体の個性が極めて薄いため、栽培地域や醸造方法などの影響を受けやすいた
め、さまざまな特徴のワインができあがります。たとえば、同じブルゴーニュ地方でもシャブリ地区で造られるワインはフレッシュで酸味がしっかりしています
が、モンラッシェやムルソーなど、コート・ド・ボーヌ地区で造られるワインはアーモンドやナッツの香りがする重厚なものも少なくありません。
ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)
フランスのロワール地方、ボルドー地方を中心に、世界中で作られている品種です。どちらかといえば淡い黄色のワインとなり、柑橘系、グースベリー、フレッ
シュハーブ、ミネラル、花など、いろいろなニュアンスを持つワインとなります。これもワインの造り手によって差はありますが、しっかりとした酸と、香草な
どの香りが豊かで、爽やかなワインが多いです。
リースリング(Riesling)
フランス・アルザス地方を中心に世界中で作られている品種です。りんご、花などの香りと同時に、ミネラルや石油など鉱物系のニュアンスが強いのも特徴で
す。りんごのような酸味が爽やかなワインとなります。
シュナンブラン(Chenin Blanc)
フランス・ロワール地方で多く作られている品種です。この品種から造られるワインは濃い目の黄色になるのが特徴です。辛口から甘口まで多様なワインが造ら
れますが、いずれにしても、アプリコットや蜂蜜など、甘いニュアンスが優先します。
ヴィオニエ(Viognier)
フランスのコート・デュ・ローヌ地方を中心に、ニュージーランドなどでも栽培されています。濃い目の黄色とワインとなり、香りはアプリコット、蜂蜜、花の
ような、香油系のニュアンスと表現されます。酸味がほとんどなく、花や蜂蜜の香り豊かな厚みのあるワインとなります。
ゲヴュルツトラミネール(Gewurztraminer)
フランス・アルザス地方を中心に世界中で作られている品種です。濃い目の黄色のワインとなり、ライチ、マスカット、花のような香りのほか、スパイス系の
ニュアンスを強く感じます。酸味が少なく、ライチやスパイスなどの独特の香りと複雑さを持ったワインとなります。
|
POINT6:
自分でワインの品質を見分ける |
|
劣化していないワインを選ぶのも大切
ワインはデリケートな飲み物であると、初歩講座1で書きました。同じ種類の同じ年のワインを買っても、一度目に飲んだときはおいしかったのに、二度目はそ
うでもないという経験をすることがあります。ワインの運び方、保存状態によって、ワインが劣化してしまうことが、少なからずあるのです。ここでは、劣化し
たワインをできるだけ買わないために、外観で判断する方法を挙げてみます。
ボトルに汚れがある
ワインのラベルやワインの瓶がワインと思われる液体で汚れていたり、ラベルにワインが流れたあとがあるもの。これは、瓶中のワインが熱などによって吹きこ
ぼれた可能性があります。
ワインのアルミの部分が不自然につぶれている
同様な吹きこぼれがあった場合でも、かろうじてラベルが汚れていなければ瓶だけ拭けば分からないのですが。しかし、それも見分ける方法があります。必ずワ
インが吹き零れたワインのコルク部分は少し盛り上がるのです。もちろんコルクの上には薄いアルミが覆ってありますから、これをもとどおりにした痕が必ず残
ります。アルミの部分が不自然につぶれていたりします。
ワインが濁っている
ワインの中身が透明ではなく明らかに不純物でにごっている場合、これは瓶詰めもしくは熟成中に微生物などの進入により、ワインが劣化している証拠です。
|